こんにちは、
プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。
今日は、ベンチャー流特許出願の活用法の続編です。
昨日、特許出願は申請した日(出願日)から1年6月の間は公開されないため、特許出願中とすることによって、相手を疑心暗鬼にさせ、開発の邪魔ができるという話をしました。
さて、本日は次のステップです。出願日から1年6月経過し、特許出願が公開された場合、ベンチャー企業が、これを有効利用するにはどんな方法があるでしょうか?
まず、一般的なやり方では、公開された公報(申請書類の内容が書かれた書面)を似たようなことをやっているベンチャー企業に送りつけて、その申請の特許権が成立した後に補償金を請求する方法があります(特許法第65条)。
この補償金の請求をするためには、その発明が特許になっていることが必要とされているので、特許請求の範囲(自己の特許権として請求する権利範囲)も権利化を意図した表現にする必要があります。
(特許にならないと使えないため…。)
また、別のやり方では、相手企業の技術者に読ませることを意識した特許請求の範囲を書くという方法があります。
一般的に特許請求の範囲は、発明の概念を抽象化して、より権利範囲が広くなるように記載します。このため、知財部や弁理士などの知財業界人には見慣れているためわかりやすい記載ですが、知財業界外の人から見るとわかりにくい記載になることが多いです。
このため、自社の特許出願の公開公報を、他のベンチャー企業の技術者・開発者が見たとしても、読む気が起こらず、気にも留めない可能性があります(もちろん、将来的に権利行使できるかもしれませんが…)。
しかし、仮に、技術者の使う言葉で特許請求の範囲を記載した場合、他のベンチャー企業の技術者・開発者が理解できるため、彼らにプレッシャーをかけることができます。
例えば、IT業界ですと、ドックイヤーと呼ばれるぐらい技術開発の速度が速いです。
そこで、特許請求の範囲を現場のエンジニアが分かるように書くことによって、相手の開発速度を遅らせることができます。
相手の開発速度を遅らせている間に、自社の商品を投入し、シェアを取るわけです。
ただし、この場合には、特許請求の範囲の記載が具体的なので、仮に権利化できたとしても、権利範囲が狭くなりがちです。このため、権利化しにくい技術のときに有用だと思います。
また、この方法は、知財部をきちんと備えている大企業には通用しません。
しかし、知っているベンチャー企業の社長さんは、
「うちの本当の敵は、大手さんじゃないんだよ。
同規模の同業さん。
そことの開発競争に勝てばいいんですよ。」
と言ってました。
その社長さんは、うまく特許出願の公開公報や、特許権を有効活用し、他のベンチャー企業や中小企業との競争に打ち勝った結果、3年後に会社を上場し、株を売却し、今では楽しく暮らしているようです。
弁理士を使うときのアドバイスです。多くの弁理士は、お客様の意図に応じて、特許の申請書類の書き方を変えますので、技術の説明に加えて、特許申請の意図も教えていただけるより使いやすい出願書類を作成できると思います。
<今日のまとめ>
1.公開公報で警告すると、権利化後に補償金請求が可能になる。
2.権利化されるまで、権利範囲がわからないので、相手の開発の邪魔をできる。
3.弁理士に情報開示したほうが、使いやすい明細書ができる。
お読み頂きありがとうございました。
2008年11月7日金曜日
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