2008年11月5日水曜日

この著作権はいくらかな?(知財の価値評価)

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、この著作権はいくらかな?という知財の価値評価の話です。

実は、私は弁理士会の価値評価推進センター運営委員を3年ほどやっています。

明日(今日?)も委員会があるので、昨晩は委員会の準備に追われていました。

この委員会が、何をやる委員会かというと、大きく分けると2つの知財の評価手法を研究しています。

1つめが、知財の定量的評価です。

知財の定量的評価とは、簡単にいえば、Kさんが持っている著作権がいくらであるかという評価です。

委員会では、この定量的評価をするために必要な手法を開発し、また、評価する際に必要な情報を収集し、その手法と情報を他の弁理士への普及することを目的に活動をしています。

知財の定量的評価を行う手法としては、

1.インカムアプローチ

 この手法は、この知財を使うことによる一定期間の売上を予測し、それを現在価値に割り引く手法です。
 俗にいう、DCF法や、モンテカルロシミュレーションなどが該当します。
 一番、一般的かも知れません。

 例えば、Kさんの全ての曲が1年目の売上は○円、2年目の売上は○円で、・・10年目の売上は○円で、現在価値を出すために5%で割り引くとすると・・・。5億円ですね!といったような計算をする方法です。

2.コストアプローチ

 この手法は、この知財を作成・入手するためにかかるであろう金額を出す手法です。

 例えば、製作費として、Kさんがロスでレコーディングして、○千万かかったし、ロンドンでレコーディングして、○千万かかって・・・。合計、5億円です。といったような計算をする方法です。

3.マーケットアプローチ

 この手法は、知財を市場で取引した場合の金額を出す方法です。

 例えば、Kさんの全曲をオークションにかけると、結果5憶円ですね。といったような計算をする方法です。

 昔は、知財の市場がなかったので、なかなか使用するのが難しい方法でした。

 しかし、最近ではオーシャントモの藤森さんたちが頑張って、知財市場の創出をして、知財の売買の相場を作ろうと努力をしているので、そのうち、広まるかもしれません。

なお、上に示した例は、かなり単純化しています。実際は様々な要因を考える必要があり、かなりの工数がかかり大変な作業となります。

このため、委員会は、知財評価手法を標準化することにより、結果のばらつきを減らすと共に、作業を楽にするように活動しているのです。

2つめが、知財の定性的評価です。

この評価は金額を出すのではなく、事業戦略を実行できるような知財力を会社が備えているかという評価方法です。

この定性的評価手法を考える上で、例えば、ダウケミカルさんのパテントポートフォリオの管理(役員室にエジソンがいたら-知的財産で勝つ経営戦略Intangibles: Management, Measurement, and Reporting)とか、キャノンさんの知財戦略(知財、この人にきく (Vol.1)や、キヤノン特許部隊 (光文社新書))などが参考になると思います。

ただ、委員会の定性的評価についての研究は、やっと佳境に入ってきたところなので、もう少しまとまってから書きたいと思います。

<今日のまとめ>
1.知財の評価は定量的評価と定性的評価がある。
2.定量的評価は、インカムアプローチ、コストアプローチ、マーケットアプローチがある。

お読み頂きありがとうございました。

それにしても、学生時代、7 Days warなどTMNの曲が好きだっただけに、今回の事件は本当にショックでした……。


起業家支援プロジェクト DREAMGATE

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