2008年12月31日水曜日

今年一年ありがとうございました。

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今年一年ありがとうございました。

この秋に開業してから、様々な方々に協力していただいたり、助けていただいたりしました。

皆様のご尽力のおかげで、順調に立ち上がることができました。

この場をお借りして、感謝を申し上げます。

どうもありがとうございました。

来年が皆様にとって良い年となりますように。

来年もよろしくお願い申し上げます。

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2008年12月28日日曜日

今年多かった相談事項

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、今年多かった相談事項の話です。

なんだと思います?

2番目に多かった相談は、「商標を取られちゃった。どうしたらいいですか」という相談です。

商標登録は早い者勝ちなので、先にその商標を使っていても権利を取れないんですよね。。。

だいたいのケースで、商標を使い始めたときに商標登録の申請をしていればとれたケースだったので、非常に残念だと思います。

他人に相手の商標をつぶしたり、ライセンスを受けたり、手がないわけではないですが、費用や時間がかかりますし、必ずしも成功するわけではないので。。。

1番目に多かった相談は、「商標をどうとればいいですか」という相談です。

知的財産権の知名度が高まったみたいで、起業される方や、起業間もない方からの商標に関する相談が多かったです。

現在、外部環境の変化が激しい中、チャンスをつかもうと多くの方が知財に目を向けて頂けたようです。

商標権を得ることで、経営上打つ手が広がりますし、こちらも相談を受けて張り合いです。

皆様のビジネスがうまく行きますように!

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月25日木曜日

生活習慣病と知財法務

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、生活習慣病と知財法務の話です。

生活習慣病って皆さんご存知ですか?

生活習慣病とは、毎日のよくない生活習慣の積み重ねによって発症する病気です。

例えば、食べすぎや飲みすぎによる糖尿病や、虫歯などがあげられます。

弁理士も基本的に動かない仕事です。

このため、気をつけないと、食べすぎによる体重増加や、血圧上昇などが起きてしまい、健康診断の時にお医者様に怒られる弁理士も多いです。

この生活習慣病は良い生活習慣に変えるとかかりにくくなります。

つまり、日々の積み重ねが大事だということです。

ただ、頭では分かっているけど、ついつい運動するのが面倒で。。。というものでもあります。

これは、知財でも同じことが言えます。

「社名の商標を他の会社がとっていて、文句を言ってこられた、どうしよう!」といった相談をよく受けます。

いろいろと手を一緒になって考えますが、これは、糖尿病などになった時の対処療法と変わりません。

それよりも、普段から必要な商標権などの知財力を形成していれば、このような事態には追い込まれません。

知財活動は、メタボ予防に毎日運動するようなものです。

確かに、運動と同じで面倒ですし、費用もかかりますが、いざ大事になってしまうと、紛争解決に費用もかかりますし、差し止め請求などによって事業が倒れてしまうこともあります。

このため、ゼロックスやキャノンなど、きつい紛争を経験した会社は知財活動に力を入れているようです。

これは、大病を患うと、健康のありがたさがわかり、摂生するようなものです。

日々の活動が大事なのは、生活習慣病と知財法務も同じですね。

<今日のまとめ>
1.日々の知財活動によって、紛争を予防できる。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月23日火曜日

特許申請の打ち合わせを効率的にする方法

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、特許申請の打ち合わせを効率的にする方法の話です。

よく職業ごとに、職業病があるという話をよく聞きます。

例えば、税理士さんなどは、食事に行くと「客単価が○○で、回転率が○○ぐらいだから、月商○○万円ね。」というようなことを考えているようです。

我々弁理士は、ものを見ると特許申請できる発明がないか、ついつい考えてしまいます。

例えば、何人かの弁理士で、中華料理屋さんに行ったとします。

話題に詰まると、回転テーブルなどを見て、テーブルの厚さ、材質、大きさ、回転部の機構、取り付け方法・・・などが特許権をとれる可能性のある発明を考え始めます。

そして、互いに特許権で保護できそうな発明がないか、あーでもない。こーでもないと語り合います。
(たぶん、みんな発明が好きなんだと思います。)

このように、弁理士同士が、発明を説明するときは、「従来の回転テーブルより、○○という点が改良されていて、○○という効果があるんだよ。」と、「従来の技術との差」や、その「技術の効果」を説明します。

これは、特許庁への特許申請書類を書くときも同じですので、その癖が会話にも出てしまうのでしょう。

逆に、弁理士のこの癖を利用して、弁理士に特許申請を依頼するときに、「従来の技術との差」や、その「技術の効果」を整理しておくと、特許申請の打ち合わせがスムーズに行えますし、特許権を取得できる可能性が向上すると思います。

<今日のまとめ>
1.特許申請の前に、従来の技術の違いを調べておくと効率のよい打ち合わせができる。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月22日月曜日

サンタクロースが赤いわけ

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、サンタクロースが赤いわけの話です。

そろそろサンタクロースの時期がやってきました。

我が家のもうすぐ4歳の息子は、サンタクロースが、煙突もないのにどうやって我が家に入れるのか真剣に悩み始めました。

このサンタクロースですが、もともとは聖ニコラウスが元ネタだったようなのですが、18世紀ぐらいは、緑色だったり、子鬼だったり、イメージが固まっていなかったようです。

現在のようなサンタクロースのイメージは、1931年にコカコーラの広告キャンペーンで打ち出されたそうです。

さて、このコカコーラ社ですが、ブランドコンサルティング会社のInterbrand社の2008年のランキングで、8年連続となる1位を獲得しました。

さすが、ビンの立体商標が認められるだけありますね。

ちなみに、日本の企業ではトヨタが6位となっていました。

このInterbrand社のブランド価値評価は、以下のように導かれるようです。

ブランド価値=ブランド利益×利益倍数

 ブランド利益は、現在および将来の利益、又はキャッシュフロー 

 利益倍数は、7つのブランドスコアを基準にしているようです。
 (主導性・安定性・市場性・展開或いは国際性・方向性あるいは動向・サポート性・法律的保護性)

財務とマーケの両方視点から導くようです。

ブランド価値が統計的に優位な水準で株価と連動しているという論文もあるようですし(Brand Values and Capital Market Valuation Review of Accounting Studies)、良いブランドを育てていくことが重要ですね。

コカコーラは、中国では、携帯のコミュニティを作ってみたり、欧州では、ituneと組んだり、ブランドイメージを高めるべくいろいろと頑張っているようです。


[参考]

日本コカ・コーラのサンタクロースのことが書いてあるサイトです。こちら

Interbrand社のブランドランキングのページです。こちら

Intrrbrand社のブランド価値評価についてはコーポレートブランド経営を参考にしました。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月21日日曜日

あの龙井茶がやっと証明商標に!

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、あの龙井茶がやっと証明商標として登録された話です。

皆さんは、龙井茶(龍井茶)ってご存知ですか?

中国の杭州特産のお茶で、もともとは、龙井村一帯で

以前、西湖に妻と義母と一緒に旅行に行き、初めて飲んだのですが、香りがよくおいしいお茶でした。

日本のお茶は蒸して作るのに対し、中国のお茶は煎って作るため、味や香りが違います。

飲み方も異なります。

龙井茶(龍井茶)は、湯呑に茶葉を入れ、熱湯を入れます。8割ぐらい飲んだら、また、お湯を足します。

そうやって、何回もお湯を足して飲みます。

自分はこのお茶が好きで、中国に行く時はたいていお土産として買って帰ります。

ただ、非常に偽物が多いらしく、産地の人たちも困っていたようです。

そこで、証明商標を出願し、証明商標として、龙井茶が登録されたようです。

さて、証明商標とは何でしょうか?

簡単にいえば、品質や地名などを守る商標制度です。

これで、龙井茶が無事保護されるといいのですが。。。

<参考 特許庁による中国商標法の仮訳です。>

中国商標法の第3条では、「証明標章とは,ある商品又はサービスに対して監督能力を有する組織に制御され,かつ,当該組織以外の単位又は個人がその商品又はサービスに使用する場合,当該商品又はサービスの原産地,原料,製造方法,品質又はその他の特徴を証明するための標識を言う。」と規定されています。

また、第16条では、「地理的表示とは,当該商品の原産地,その特有の品質,名声又は主に同地域の自然的若しくは文化的要因によって決定されるその他の特徴を表わす標識をいう」と規定されています。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月19日金曜日

知財屋のための価値評価入門 その4 NPVなどの注意点

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、知財屋のための価値評価入門 その4 NPVなどの注意点の話です。

さて、昨日までNPVやWACCなどを説明してきました。

例えば、ライセンスの値付けの時に、相手がNPVに基づいて10億円という金額を提示したとします。

でも、こちらの想定していた金額は5億円で、その金額と比較すると高い金額です。
予算オーバーですし、このままの金額を飲めば、上司に怒られます。

どうすれば、いいでしょうか?

「高い!」と言って、交渉を断ち切るようなはったりをかましますか?
それとも、NPVで計算されているからあきらめて受け入れますか?

いえいえ、別の方法があります。
相手のNPVの前提条件を精査し、交渉する窓口を見つけるのです。

NPVは、利率(資本コスト・WACC)、期間、フリーキャッシュフローに分解できます。

例えば、資本コストが低いと、NPVが高くなります。そこで、自社の資本コストが高いということを主張してもいいでしょう。

また、期間が長めに設定されると、NPVが高くなりがちですが、商品寿命や、その技術の賞味期限が短いことを主張してもいいでしょう。

さらに、フリーキャッシュフローの計算で、売上が楽天的であれば、控え目な数値を主張してもいいでしょう。また、コスト感覚が甘ければ、実際にかかるコストを主張するのもいいでしょう。

さらに、ディシジョンツリーなどで、そのライセンスを使った事業が成功する場合のシナリオや、失敗した時のシナリオを描くことによって、NPV全体を低下させることができます。

一つの変数だけをいじると恣意的に見えてしまうので、いろんな場所を少しづつ変更し、全体として、NPVを下げたほうがいいかと思います。
一見、合理的に見えるので。。。

このように、相手がNPVなどの数式を使って交渉してきてもあわてずに、本当にその数字を導き出した前提が正しいか確認するといいと思います。

また、投資銀行や、ベンチャーキャピタルの知人たちは、NPVなどは数字を説明するために使うとよく言います。

つまり、最初にターゲットの金額があって、自分の上司や、株主、相手、相手の上司に対して、数字が出た根拠を説明するために使うそうです。

NPVなどは、価値を評価するためのすばらしい理論ですが、インプットが間違っていれば、間違ったアウトプットとなります。

そこを意識してライセンス交渉などで有効活用してください。

知財屋のための価値評価入門は、今回でひとまずお休みです。
Mさんご質問ありがとうございました。

お読み頂きありがとうございました。

<今日のまとめ>
1.相手が出してきたNPVは、計算の前提を注意深く精査する必要がある。

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知財屋のための価値評価入門 その3 WACC

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、知財屋のための価値評価入門 その3 WACCの話です。

WACCってなんでしょう?
一昨日、昨日で出てきたDCFやNPVを計算するときの割引率です。

WACCは、会社やプロジェクトが集めてきたお金が求める最低限のリターンです。

会社がお金を得るには三つの方法があります。

一つ目が利益です。

 昨日の例でいえば、焼き芋を売って得た、利益が該当します。
 顧客の期待に応じた結果とも言えます。

二つ目が借金(負債)です。

 これは、銀行からの借り入れや、社債などが該当します。
 銀行などは、所定の利子を払うことを期待しています。

 負債による資金調達は、利子を払うため、負債コストがかかります。

 負債コスト(rD) = 金利
          = 支払利息 / (期首有利子負債 - 期末有利子負債)

三つ目が株の発行です。

 これは、資本家から資金調達します。
 一見返す必要のないお金に見えますが、実は、資本家は、株の値上がりや、配当を期待しています(と仮定します)。

 株主は、会社が破たんすると投入した資本を回収することができません。

 このため、ほとんどリスクのない国債よりも高い利回りを期待します。
 もしも、同じ利回りだったら、株に投資しますか?銀行に預けますか?

 そんな感覚です。

 株で資金調達するときの株主コストは一般的にCAPM(Capital Asset Pricing Model 資本資産価格モデル)で計算されます。

  株主資本コストrE
  =リスクフリーレート + β×リスクプレミアム
  =リスクフリーレート + β×(市場全体の投資利回り - リスクフリーレート)

  リスクフリーレートは、例えば、国債や、米国国債などリスクがほとんど無いと考えられるものの利率です。

  リスクプレミアムは、例えば、インデックスなど市場全体の投資利回りからリスクフリーレートを引いたものです。

  βは、市場の状況に応じて、その会社の株価がどのように動くかという係数です。会社ごとに決まっています。
  
上記の三つの方法によって会社は資金を集めます。

こうして集めた資金は、借金によるものや、株主資本によるものの比率によって、最低限求められるリターンが定めれらます。

これが、WACC(Weighted Average Cost of Capital 加重平均資本コスト)です。

 WACC=D/(D+E)×rD×(1-税率)+E/(D+E)×rE
 
 Dは、借金の総額 
 Eは、株主資本
 rDは、負債コスト 
 rEは、株主資本コスト(CAPMで計算したもの)

このようにして、計算されたWACCがDCF法の割引率として使われます。
 
明日は、知財価値評価の際の注意事項で、数式はほとんど出てこないはずです。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月17日水曜日

知財屋のための価値評価入門 その2 NPV

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、知財屋のための価値評価入門その2(NPV)です。

例えば、ラーメン屋さんと、焼き芋屋さんとのどちらかに起業しよか迷っているとします。

そのとき、どちらを選べばいいんですか?

好きな方!

それはそれで正論ですね。

ただ、別の視点で考えると、それぞれの選択肢の現在価値や、投資効率を考えるという選び方もあります。

つまり、ラーメン屋さんや、焼き芋屋さんで設けられる金額の現在価値の合計や、投資した金額に対する利回りを考えるということです。

[NPVやIRRの計算例]

ラーメン屋さんを開業するのに1500万円かかり、1年目から5年目まで毎年3600万円のフリーキャッシュフロー(利益みたいなもの)が得られるとします。

焼き芋屋さんを開業するのに100万円かかり、1年目から5年目まで毎年600万円のフリーキャッシュフロー(利益みたいなもの)が得られるとします。

お金を調達するための利率である資本コスト(WACC)は7%だとします。

昨日書いたDCF法を利用して、各年の利益を割り引いて、年ごとの利益の現在価値を求めます。

そして、それを合計することでラーメン屋さんと、焼き芋屋さんの現在価値(NPV Net Present Value)が計算できます。

NPVは、以下の計算式で求められます。
     n
NPV=Σ (CFn)/(1+r)^n   CFnはn年度のキャッシュフロー rは資本コスト
    n=1

また、投資した金額に対する利回り(IRR Internal Rate of Return)は、NPVが0になる資本コストを求めることで計算できます。

まあ、いろいろ書いていますが、NPVやIRRは、エクセルの関数のNPVやIRRを使えば簡単に計算できます。

計算すると、ラーメン屋さんのNPVは、¥123,931,876で、IRRは、239%となり、

焼き芋屋さんのNPVは、¥22,057,182で、IRRは、600%となります。

お店全体で得られる利益は、ラーメン屋さんの方が良いですし、利回りを考えると焼き芋屋さんの方がいいです。

このような視点からもどちらを選ぶか選択することができます。

自分だと利回り重視で、きっと焼き芋屋さんを選択します。

知財面の応用としては、NPVやIRRは、複数のプロジェクトから一つのプロジェクトを選択するときや、ライセンス契約をするときの対価を考えるときに使用することが考えられます。

明日は、WACCやCAPMを書こうと思います。

<今日のまとめ>
1.NPVやIRRは、Excel関数にあるので、計算自体は簡単です。

お読み頂きありがとうございました。

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知財屋のための価値評価入門 その1 DCF法

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、知財屋のための価値評価入門その1です。

「今日100万円あげるよ!」と言われるのと、「5年後に100万円あげるよ!」と言われるのとどちらがうれしいですか?

普通は、前者ですよね。

何でですか?

5年後だともらいぱぐれるから。。。

そんな見方も正しいかも知れませんが、別の見方もありますよね。

つまり、今日の100万円と5年後の100万円では金銭的な価値が異なるのです。

例えば、複利計算で年1.5%で100万円を運用したとすると、5年後には、107万円になります。
(下がったとは言え、米国の5年もの国債の利率は、12日のデータによれば1.524%ですし、
 他の商品を使っても1.5%ぐらいの運用はできると思います。。。。         )

つまり、今日の100万円は、5年後には107万円なので、5年後の100万円よりも価値が高いのです。

逆に言えば、5年後の100万円の今日の価値は、約92万円(計算は100万/(1+1.5%)^5です。)となります。

このように、将来に得られるお金を所定の割引率(例えば、今回の例では1.5%)で現在いくらになるかと計算する手法をDCF(Discount Cash Flow)法と言います。

明日は、NPVの話を書こうと思います。

<今日のまとめ>
1.DCFは、将来得られるキャッシュの現在価値を求める手法です。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月16日火曜日

簡単に発明を生み出すカードゲーム?

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、簡単発明を生み出すカードゲームの話です。

先日、ブログに書いたアイデア開発のTRIZがカード化されていたみたいです。

IT MediaのTRIZのカードゲームの記事

TRIZの基本概念がプリントアウトされているので、これを見ながら発想を膨らませ、いいアイデアを作ることができるということでしょう。

ちなみに、アイデア開発手法のTRIZは、産業能率大学でも研究していますので、興味のあるかたは、産業能率大学のサイトをご覧になると勉強できます。

お読み頂きありがとうございました。

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あの雪見大福は、後発メーカの知財戦略の教科書です!

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、雪見大福の話です。

あの雪見大福は、後発メーカの知財戦略の教科書と言えると思います。

昔、ロッテはアイスクリームの分野では、後発メーカでした。

その当時、ロッテが、アイスクリーム市場に参入を試みようにも、先発メーカの壁が厚く、なかなか入り込むことができませんでした。

そこで、ロッテの開発チームは、日本人の好きな大福とアイスクリームを組み合わせることを思いつきました。

しかし、開発初期は、大福の部分が固くなり、食べられたものではありませんでした。

いろいろと試した結果、アミロベクチンでアイスクリームを包むことで、やわらかい食感を保つことができるとわかりました。

そして、その技術の特許出願を行い、その技術の保護を図りました。

案の定、雪見大福を発売したとたん、先発メーカを含む競合メーカが類似商品を出してきました。

しかし、特許権を取得したとたん、競合メーカは市場から去っていきました。

ロッテが行ったことを整理すると、

1.ロッテは、アイスクリームは夏の食べ物であるという固定観念をくずし、冬に食べるアイスクリームという新しいコンセプトを作りました。
  (満たされていない市場ニーズを発見し、市場を創出しました)

2.ロッテは、冷凍しても凍らない皮を開発しました。
  (その市場で、武器となる技術を開発しました。)

3.ロッテは、凍らない皮の技術を特許権で守りました。
  (その市場で、武器となる技術を保護し、参入障壁を作りました。)

4.ロッテは、コンセプトに合った雪見大福というネーミングを行いました。
  (ブランドを商標権で守りつつ、ブランドイメージを向上させました。)

5.ロッテが、雪見大福のブランドイメージを高めたので、現在では、雪見大福の特許権が切れていますが、不正競争防止法で保護されています。
  (ブランドイメージを高めた結果、他社の不正なただ乗りを防げるようになりました。)

このように、ロッテが雪見大福で行ったことは、後発メーカが成功するための秘訣が詰まっていると思います。

雪見大福を食べつつ、ブログを書きました。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月15日月曜日

この商標、個人で取る?会社で取る?

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、この商標、個人で取る?会社で取る?という話です。

起業したら、商標権を取る。

これは鉄則だと思います。

では、商標権を取る場合、会社名義で商標権を取るか、個人名義で商標権を取るかどちらがいいのでしょうか?

一般的な考え方を示しますと、

○個人名義の場合

 乗っ取り防止策になります。
 例えば、京都の袋屋さんみたく、株を取られても商標権があると文句が言えます。

 つまり、資金調達のために、株を切り売りし、経営権がなくなり、いつの間にか乗っ取られたとしても、商標があると交渉時の武器になります。
(道義的な問題は別として。。。)

○会社名義の場合

 上場や売却などを考えている場合、会社所有の方がいいです。

 上記の理由によって、商標権が会社所有でないと、安心して資金が出せません。
 せっかく資金を入れても、商標権の問題でトラブルになると困りますので。。。

ちなみに、商標権は、譲渡可能なので、個人名義でとっても後に会社名義に変えることは可能ではあります。

<今日のまとめ>
1.商標権を取得するときに、個人名義で取るか会社名義で取るか考える必要があります。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月13日土曜日

中国的知的財産権情况

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、中国的知的財産権情况の話です。

[2007年の中国の基本データ]

人口  約1,328,630,000人

GDP 3,241.6 billion dollar

一人あたりのGDP 2,440 dollar

GDPの実質成長率 11.9%

[2006年の中国商標出願件数]

中国  約741,942件 この5年間、平均約23.9%の上昇
香港   約23,529件 この5年間、平均約 2.9%の上昇

日本  約143,237件 この5年間、平均約 2.0%の上昇

ただし、中国は、多区分の出願を認めていないので、出願件数が多くなりがちです。

また、中国では、第25類(服など)の出願件数が、84,300件あり、全体の約11%を占めています。

北京・上海・成都では、若い女性の服のレベルが、だいぶ東京に近付いてきているように感じています。
(女性の目で見ると違うのかも知れませんが、平均的な男性の感覚ということで。。。)

また、毎年行く山東省煙台市でも、数年前と比べセンスが良くなってきています。
スーパーに並ぶファッション誌も増えてきていると感じます。

サブプライムローンの影響がどの程度出るかわかりませんが、一度火が付いたファッション欲がそう簡単に収まるとは思えません。

現在のところ、日本の服もデザイン性から人気があるらしいので、早めに中国に商標を出したうえで、Alibabaなどを利用して中国に販路を開拓するのもチャンスだと思います。

[2006年の中国特許出願件数] 

中国  210,501件 この5年間、平均約 20%の上昇
香港   13,790件 この5年間、平均約 8%の上昇

日本  408,674件 この5年間、平均約 2%の減少 2001年がピーク

中国は国家戦略として、技術に力を入れているため、今後も出願件数が増えることが予想されます。
また、GDPの伸びや、人口を考えるとマーケットとして魅力があります。

一方、次回の中国専利法(中国の特許法)の改正で、職務発明規定がさらに厳しくなり、専利権を譲渡した時の10%以上の額を発明者に渡すという条項が入りそうです。

この条項が入ると、R&D拠点としてはコストが向上するので、発明の数が減少し、出願件数は抑制されるかも知れません。

自分は、今後数年間は出願件数が上昇していくのではないかと思っています。

なお、中国の基本データは、アジ研ワールドトレンド
出願数のデータは、WIPOのウェブサイトから入手しました。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月12日金曜日

あの時に、シャンプーの商標権を取っておけば。。。

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、あの時に、シャンプーの商標権を取っておけば。。。という話です。

私が弁理士になる前の話です。

親しい美容師が経営する美容院が、シャンプーを自社開発し、売り出したところ、ある程度人気が出て、荒川区周辺では有名になりました。

その美容師さんは、店員さんが年を取り、美容師として働くのがつらくなったときのために、そのシャンプーを開発したので、これで店員さんたちが年をとっても平気だと思い安心しました。

ところがです。しばらくすると大手化粧品会社さんから、その会社の登録商標と同じ名前のシャンプーだから使うなという警告状が来たそうです。

その美容師さんが、心配になって専門家に相談したところ、大手化粧品会社さんが言う通りだから、シャンプーの販売をやめた方がいいと言われました。

このため、泣く泣く販売をやめたという事件がありました。

次の年、大手化粧品会社さんは、同じ名前のシャンプーを売り出しました。

どうやら、大手系商品会社さんが、商標の登録申請をしたのが、その美容師さんがシャンプーを販売してから少したったぐらいの時期だったようです。

もしも、シャンプーを開発した直後だったら、美容師さんも商標権が取れたのですが、ぼやぼやしているうちに大手化粧品会社さんに商標権を取られ、販売中止という事態になってしまいました。

そんな知り合いの経験から、親しい方には早めに商標を取ることを進めています。

<今日のまとめ>
1.販売する前に商標権はとったほうが良い。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月11日木曜日

海外で有名、でも日本では無名の商標を登録できるか?

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、海外で有名、でも日本では無名の商標を登録できるかという話です。

ある人から質問をいただきました。

「イタリアに旅行に行って、いい感じのバックのブランドを見つけたんです。

 そのブランド、日本じゃ知られてないけど、質も良く、値段も手ごろだったんで、買ったんです。

 そのバックを持っていたら、イギリス人の女の子から、どこで買ったの?って聞かれたんです。

 そのブランドはイギリスで人気らしくて、私、日本でもはやるなって思ったんです。

 そしたら、数年後、日本にも進出してきました。

 それでね質問なんだけど。

 もしも、そのブランドが日本で有名になる前に、私が商標権とっちゃったら、そのブランドに権利行使できるのかなぁ?

                                         」

「それって、ずるくない?」

「でも、いつも鈴木さん、商標権とか、早い者勝ちって言ってるじゃない。

 日本で商標権を取らないほうが悪いんじゃないの?            」

「実はね。Oさん。

 海外で有名な商標は、そんな不正の目的では、登録できないんだよ(商標法第4条1項19号)。」

「そうなんだ。。。

 いいチャンスだっと思ったんだけどなぁ。。」

<今日のまとめ>
1.海外で有名な商標は、日本で無名であっても不正の目的では登録できない。

お読み頂きありがとうございました。

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簡単な発明開発手法

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、簡単な発明開発手法の話です。

TRIZってご存知ですか?

アイデア開発の手法です。

結構有名な手法らしく、はじめよう!カンタンTRIZ―頭の片隅にあるアイデアをかたちにする本を前務めていた特許事務所の方に進められました。

この本によれば、アイデア開発は、

1.機能分析

2.アイデア出し

3.実用性の評価

という3つのステップで構成されるそうです。

1.機能分析

 問題点を一般化することが重要だそうです。
 たいていの問題は、一般化すれば、以前誰かが解決したことがある問題となるそうです。

 例えば、日本酒の味の向上に、カメラの現像液の攪拌の原理を応用したそうです。
 (同じ液体という一般化をしたそうです。)

 そして、問題を解決するための機能(入力と出力との関係)を分析し、抽象化することによって他分野の技術が導入しやすくできるそうです。
 
 また、機能を分析するときには、

 (A)前処理・主処理・後処理に分けて考える。

 (B)主処理のプロセスを時系列に考える。

 (C)プロセスや、構成要素の目的を考える。

 と考えることによって、機能を扱いやすい大きさのサブ機能に分割することができます。

2.アイデア出し

 以下の8つの観点からアイデアを抽出していきます。

 ○分割:機能を分割する?統合する?
 ○先取り:前もって処理をさせてみる。
 ○逆発想:構成や順序を逆にしてみる。
 ○ダイナミック:動かないものを動かす。動くものを固定する
 ○周期的作用:連続処理を周期的な処理に変えたら、周期を変えたら?
 ○災い転じて福となす:有害なものを無害にする方法を考える。
 ○セルフサービス:自己組織化できないか。
 ○パラメーターの変更:何かのパラメータをいじってみる。

3. 実用性の評価
 
 アイデア出しでたくさん出てきたアイデアを絞るため、実用性の評価を行います。

 これは、以下の3つのポイントで考えるようです。

 ○なくてはならない特性を持っているか。
 ○あってはいけない特性をもっているか。
 ○信頼性はあるか。様々な条件を変化させ、信頼度が高いかなどシミュレーションする。

 TRIZは、一見単純そうですが、クレームを展開する際などに参考になりますよ。

 だまされたと思って、ぜひ、おためしあれ。

<今日のまとめ>
1.TRIZは特許請求の範囲作成の際に参考になる概念だと思います。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月10日水曜日

2006年の特許出願件数

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、特許の出願件数の話です。

特許って年間どれくらい出願されているのか?

どの企業が多く出願しているのかと聞かれることがあります。

大企業がまんべんなく特許出願をしているかというとそうではありません。

2006年の特許出願数の順位を示すと、以下のようになります。

順位

社名

2006

2005

2004

1

松下電器産業株式会社(パナソニック株式会社)

13842

15583

17111

2

トヨタ自動車株式会社

8571

7261

6133

3

キヤノン株式会社

8317

11353

11098

4

株式会社東芝

8104

7328

7097

5

セイコーエプソン株式会社

8000

9456

8631

6

シャープ株式会社

5992

6236

5816

7

株式会社リコー

5953

7261

6415

8

富士フイルムホールディングス株式会社

5615

7521

6383

9

ソニー株式会社

5419

5852

6844

10

富士通株式会社

4923

4185

3634

11

三菱電機株式会社

4697

4671

4339

12

株式会社日立製作所

4485

4492

4572

13

株式会社デンソー

4160

4056

4228

14

富士ゼロックス株式会社

4012

4766

4176

15

日本電気株式会社

3318

2926

2707

16

三洋電機株式会社

3099

3412

3793

17

本田技研工業株式会社

2893

3028

3387

18

松下電工株式会社(パナソニック電工株式会社)

2871

3074

2508

19

日産自動車株式会社

2731

3728

4053

20

三星電子株式会社[KR]

2536

2521

2439


2006年の国内の総出願件数は、407570件です。

割合でみると、

1

松下電器産業株式会社(パナソニック株式会社)

3.40%

2

トヨタ自動車株式会社

2.10%

3

キヤノン株式会社

2.04%

4

株式会社東芝

1.99%

5

セイコーエプソン株式会社

1.96%

6

シャープ株式会社

1.47%

7

株式会社リコー

1.46%

8

富士フイルムホールディングス株式会社

1.38%

9

ソニー株式会社

1.33%

10

富士通株式会社

1.21%

11

三菱電機株式会社

1.15%

12

株式会社日立製作所

1.10%

13

株式会社デンソー

1.02%

14

富士ゼロックス株式会社

0.98%

15

日本電気株式会社

0.81%

16

三洋電機株式会社

0.76%

17

本田技研工業株式会社

0.71%

18

松下電工株式会社(パナソニック電工株式会社)

0.70%

19

日産自動車株式会社

0.67%

20

三星電子株式会社[KR]

0.62%



となり、上位20社で日本の出願の26.88%を占めます。

ちなみに、上位100社で日本の出願の47.22%を占めます。

東京証券取引所の12月5日の上場企業の数が、2,390社なので、一部の企業が集中的に特許出願をしていることがわかります。


現在、東証の上場企業1%が、日本の全ての特許出願の26.88%を占めているのです。

もちろん、業種を無視したあらい議論ではあることは承知していますが。。。

なお、データの元ネタは、特許庁のサイトです。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月9日火曜日

他人の権利が消滅したら権利を取れると聞いたが本当?(特許と商標の違い)

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、特許と商標の違いの話です。

ある方から、他人の権利が消滅したら権利を取れると聞いたが本当か?という質問をいただきました。

この質問は、Yesでもあり、Noでもあります。

どういうことかと申しますと、

実は、商標権は、他人の権利が消滅したら所定期間後に権利を取ることができます。

一方、特許権は、他人の権利が消滅しても権利を取ることができません。

これは、商標権が、商標にくっついた信用(イメージ)を保護するものに対して、特許権が発明を保護するものだからです。

例えば、「東京通信工業株式会社」って登録商標があったとします。

しかし、この「東京通信工業株式会社」は、社名を「ソニー」に社名を変え、登録商標の「東京通信工業株式会社」を放棄したとします。

それから時間がたち、「東京通信工業株式会社」と「ソニー」とは、全く異なるイメージを持つようになりました。

もしも、使っておらず、権利も放棄した「東京通信工業株式会社」が、他の会社が登録できないなど、登録商標が消滅しても、一度登録商標になったものを登録できないとすると、そのうち商標として、使える言葉がなくなってしまう恐れがあります。

そこで、商標権については、他人の権利が消滅したら所定期間後に権利を取ることができます。
(実は、「東京通信工業株式会社」が登録できるかは、別の問題がありますが。。。)

これに対して、特許権は、発明を守るものなので、他人の権利が消滅後に権利を取ることはできません。
例えば、エジソンの発明した電球の権利をまた誰かが取ることができると、社会が混乱してしまいますよね。

<今日のまとめ>
1.商標権は、他人の権利が消滅したら所定期間後に権利を取ることができるのです。
2.特許権は、他人の権利が消滅しても権利を取ることができません。

お読み頂きありがとうございました。

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IPカルチャー教室

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、IPカルチャー教室の話です。


この間の日曜日に、日本弁理士会の関東支部からの派遣として、発明協会さん、日本レコード協会さん、コンピューター著作権協会さんと一緒に板橋区教育科学館で小学生向けに知財授業を行ってきました。



内容

前半は、1階のホールでサイエンスショーを行い。

後半は、

 1.フィルムコマ(カメラのフィルムケースで作るコマ)の工作を行い。

 2.フィルムコマを題材に、音楽の発明について話を持っていき(鈴木の担当)

 3.音楽の著作権などの話をし

 4.模倣品のクイズをする

といったものでした。

子供たちは、工作を通じて、もの作りの楽しさや、工夫の楽しさを経験できたみたいでした。

自分は、持ちネタとして、雪見大福の話をしたところ、子供以上にお母様方に受けていました。

たぶん、ほぼ同世代で、雪見大福と育っただけに、親近感があったのでしょうね。

また、模倣品クイズでは、子供たちに、トトロのぬいぐるみなどの模倣品を見分けてもらいました。

子供たちは、さわり心地でも新製品と模倣品とを見分けることができるようです。

また、あるお父さんは、レコードを作る大変さを知り、中国出張の帰りに海賊版のCDを買うのをやめようと言ってくれ、やったかいがあるなぁと思いました。

<今日のまとめ>
1.子供は、皮膚感覚で本物と偽物がわかります。本物を買いましょう!
2.中国主張などで、模造品や海賊版を買うのはやめましょう。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月7日日曜日

中国で知財を取る意味があるのか?

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、中国で知財を取る意味があるのかという話です。

中国はコネ社会だから、特許や商標を取るだけ無駄じゃない?

どーせ。模倣品が次から次へと出てくるし、外国企業に厳しい国だから、意味がないよ。

費用ばっかりかかって、実際使い物にならないんじゃないか?

などの疑問が中国で知的財産権を取ろうと思うときにありますよね。

しかし、中国で商標権などの知的財産権を取ることの意味は十分あると思います。

こんな事件がありました。

中国で、ヤマハ発動機株式会社(ヤマハ)は、指定商品「オートバイ」で、商標「YAMAHA」と、「雅馬哈」と、「Future」の登録商標を持っていました。

そして、「YAMAHA」、「雅馬哈」は、全国重点商標保護目録に掲載されていました。

このような状況下で、ある中国企業Aが、日本国内で、「日本雅馬哈株式会社」で登記しました。
(商標と商号は別の法律によって保護されているため、登録商標と同じ商号でも登録される場合があります。。。)

そして、日本雅馬哈株式会社は、中国企業Aとの間に「日本雅馬哈株式会社」と「日本YAMAHA株式会社」の会社名を使わせる契約を結びました。

そして、中国企業Aは、「日本YAMAHA株式会社」と「Future」と表示したエンジンとオートバイを販売しました。

まず、ヤマハは、日本の「日本雅馬哈株式会社」の商号の使用が、不正競争防止法による不正競争行為だとして、商号の使用禁止などを求め、裁判に勝ちました。

さらに、ヤマハは、中国でも商標権侵害で訴え、約830万人民元(約1億12百万円)の損害賠償請求を勝ち取りました。

例えば、山東省では、100元出せば、90分ぐらいマッサージが受けられますので、感覚としては、大体7億円ぐらいの損害賠償請求を勝ち取ったというところでしょうか。

このように、最近では中国でも日本企業が、現地企業を商標権侵害で訴え、勝訴し、かなりの額の損害賠償請求が認められるようになりました。

もちろんヤマハが中国でかなり宣伝活動をし、知名度を上げたこと、さらに、訴訟手続きなどが上手かったことなど様々な要因があったと思いますが、ヤマハが中国で商標権を取得していなければ、勝負すらできなかったはずです。

もしも、中国である程度の価格帯のビジネスをするならば、中国商標は必須だと思います。

<今日のまとめ>
1.最近では、日系企業が勝訴する判決も出ている
2.最近では、高額の損害賠償が認められている。

お読み頂きありがとうございました。

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デザインの保護

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、デザインの保護の話です。

新しい椅子や、照明器具をデザインした場合、どのような保護が考えられるでしょうか?

まず、考えられるのは、意匠法(デザインを保護する法律)による保護になります。

意匠法では、登録より20年間保護することが可能です。

次に、不正競争防止法の2条1項3号による保護も考えられます。

こちらは、裁判などで立証する必要がありますが、ライフサイクルの短い商品の場合では、登録手続きが不要なため、使えることもあります。

ところで、著作権による保護はどうか?という話もありますが、これにはいろいろな議論があります。
(いわゆる応用美術の問題です。)

著作権の規定には、「著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」という規定があります(著作権法第2条1項1号)。

椅子が著作権法で保護されるには、この「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」かどうかが問題になります。

例えば、博多人形が、意匠登録が可能であるからといって、著作権法上の保護の対象から除外すべき理由とすることもできない。といった裁判例もあります。

これを考えると、デザイン性の高い椅子も保護されてもいいような気がしますが、自分は、宮内庁御用達の一品ものレベルの椅子でもない限り、著作権による保護は難しいのではないかなぁと思っています。

仮に、著作権による保護が認められると、椅子に対して、作者の死後50年間権利が残ってしまいます。これは、他の法域による保護とのバランスも欠きます。

さらに、実態審査を受けた上での登録制度がないため、第三者の予測可能性を欠くため、かえって文化の発展を妨げてしまうのではないかなぁと思っています。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月6日土曜日

高校生と著作権

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、某高校に著作権の授業に行ってきました。

実は、弁理士会では、学校教育支援を行っていて、自分もその学校教育支援の一環として、茨城県の某高校に行って、著作権の授業を行ってきました。

そこでの生徒さんとの雑談で出てきた質問に基づいて、想定事例集を作ってみました。

Q. 昼休みに教室で、ブリーチのセリフを言ってまねをするのはありですか?
A. 平気です。
  好きなだけ、始解だの万解だの叫んでください。
  (なお、ブリーチは、高校生に人気の漫画です。「始解」「万解」は、主人公達の技らしい。。。)

Q. ブリーチとか、ワンピースなどの同人誌を作って、コミケで販売しているんですけど。平気ですか?
A. 厳密にいえば、NGです。複製権と翻案権と同一性保持権の侵害になります。
  コミケで、同人誌が良く売られていますが、単に、著作権者が権利行使をしてきていないだけです。
  例えば、ポケモンの大人向けの同人誌を作った人が、複製権侵害で逮捕されたという事例があります。
  (なお、ワンピースは、高校生に人気の漫画です。また、コミケは、日本最大手の同人誌販売のイベントです。)


Q. Exileとか、Gun’s and RosesのPVをyoutubeや、ニコニコ動画にアップするのはありですか?
A. だめです。
  公衆送信化権の侵害です。

Q. コピーバンドを文化祭でやっても平気ですか?
A. 入場料を取らなければ平気だと考えられます(38条)。

Q. 他の漫画の構図トレースしてマンガを描きましたが、まずかったですかね。
A. まずいです。
  複製権や、翻案権の侵害になる可能性があります。

自分の世代より、ネットを使いこなしているように感じました。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月5日金曜日

中国で他人に商標を登録されたら(中国商標の異議申し立て

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、中国で他人に商標を登録されたときの話です。

中国で、商標が登録された場合には、日本と似たような異議申立制度があります。

異議申立制度って何?という方もあると思います。

これは、特許庁(中国では商標局)が審査して、登録してもいいと考えてから、その商標を公開し、一定期間に文句(異議)がなければ、登録を確定する制度です。

[中国の異議申立制度(中国商標法第30条)]

○異議を申し立てる者
 誰でもできます(日本と同じです)

○異議を申し立てる商標
 予備的査定を受け、公告された商標(審査中の商標には異議申し立てはできません)

○異議を申し立てる理由
 (A)商標としての登録要件を満たしていない。
 (B)先に登録されている商標と類似する。
 (C)未登録周知商標と類似する。

○異議を申し立てられる期間
 公告から3ヶ月(日本は2ヶ月です)

○異議を申し立てるのに必要な書類
 (A)異議申立申請書 2部(規則22)
    商標異議申立書には、異議申立されている商標が公告された商標公報の発行号数及び予備的許可番号を明示します。
    商標異議申立書に、明確な請求及び事実根拠を記載し、関連の証拠資料及び証明書を添付します。
    仮に、関係当事者は異議申立を行った後に、関連証拠資料及び証明書を補足するときは、異議申立書又は答弁書にその旨を明示する必要があり、申立書又は答弁書の提出日から3月以内に提出する必要があります。

 (B)異議を申し立てる商標の公報の写し
 (C)異議を申し立てる人の署名した委任状 

○その他
 (A)代理委任状は,代理の内容及び権限を明確に記載しなければならず、外国人又は外国企業の代理委任状にあっては、委任者の国籍も明確に記載する必要があります(規則7)。
 (B)書類は、中国語で書く必要があります(規則8)。
 
  
<今日のまとめ>
1.中国でも異議申し立て制度があります。
2.申し立ての期間は、日本より長いですが、翻訳や現地とのやり取りを考えるとあまり余裕はありません。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月4日木曜日

株価は著作権で保護されるか?

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、株価は著作権で保護されるか?という話です。

どう思われますか?

たぶん、株価それ自体は保護されないと思います。

著作権法で保護される著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法第2条1項1号)を言います。

株価それ自体は、社会的な事実ですので、著作物には該当しないと思います。

(株価は市場参加者の感情を表しているという人もいますが。。。)

では、日経平均や、TOPIXなどの指数の値はどうなるでしょうか?

社会的事実を素材として、統計資料としてまとめ、その目的に沿うように工夫をして表現していると著作物として認められる可能性があります。

ただし、ありふれたグラフや表は認められません。

日経平均や、TOPIXは、株価を素材として、まとめて株式市場のプレーヤーが使いやすいように工夫して表現しているので、認められる可能性はあるかなぁと思っています。

<今日のまとめ>
1.著作物は、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものを言います。


お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月3日水曜日

この社名はだめと言われたら?

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、この社名はだめと言われたら?という話です。

商標は早い者勝ちです。つまり、特許庁に早く申請した会社や人が商標権を取得できます。

さらに、商標権者は、登録商標を独占的に使用できます。

このため、他人に自社の社名商標を取得され、その他人によって商標権に基づいて権利行使をされると自社の営業が差し止められたり、損害賠償請求を支払う必要が出てきます。

それじゃ、欲しい商標が他の人にとられてしまった場合、どうすればいいでしょうか?

仮に、自分が使ってる店名が、第三者に商標権を取られていた場合、

 1.店名を変える。

 2.相手の商標権を取り消す。

 3.ライセンスを受ける。

 4.相手が何か言って来るまで営業を続ける。

以上の4つの方法が考えられると思います。

1.店名を変える

 メリット:新しい店名で商法を取得できる可能性がある。
      安心して営業ができる。

 デメリット:せっかく築き上げた信用が失われる。
       宣伝・広告にコストがかかる。

2.相手の商標権を取り消す。

 メリット:今の店名のまま、安心して営業ができる。

 デメリット:必ずしも取り消せるとは限らない。
       解決まで、時間がかかる。

3.ライセンスを受ける

 メリット:今の店名のまま、安心して営業ができる。

 デメリット:必ずしもライセンスを受けれるとは限らない
       足元を見られ、費用がかかってしまう場合がある。   

4.相手が何か言って来るまで営業を続ける。

 メリット:あまり面倒ではない
      うまくすれば、先使用権が認めれる場合がある。

 デメリット:権利者から権利行使を受けるリスクを常に有している。

それぞれ、メリット・デメリットがあるので、事案に合わせて組み合わせることが必要だと思います。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月2日火曜日

他人から商標権による権利行使を受けた場合

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、他人から商標権による権利行使を受けた場合の話です。

例えば、Aさんが経営する都内で江戸時代から続く一部で非常に有名な料亭「さくら」があったとします。

そこでは、花板になるために厳しい修行が重ねられ、料理もサービスも一流でした。

ただ、知財(商標)に興味がなかったのが問題でした。

知らないうちに、そのAさんの商標「さくら」が京都の老舗の料亭Bに取られていたのです。

しかもずーっと気づかずに5年の月日が経過してしまいました。。。

Aさんは、バブルがはじけたので、業態を変えようと積極的に広告を打ち、知名度を上げようと努力しました。

ところがある日のこと、料亭AにBから警告状が届きました。

商標権侵害による差止請求と損害賠償請求です。

料亭Aはびっくりし、弁理士に相談しました。

料亭Bは、普通に営業しているので、不使用取消審判も無効審判もできません。

しかし、何年も前から営業をしており、有名だったので、裁判で先使用権(商標法第32条)が認められ、何とか営業を続けることができました。

今回のケースでは、たまたま有名であるなど要件を満たしていると認定され、先使用権が認められましたが、この有名か否かが取引の実情などによって判断されるため予想が困難です。

例えば、コーヒーの事例では、ある県とその周辺でシェアを30%とっていたにも関わらず、認められなかったというケースもあります。

また、古い日本酒の事例では、関西地方の権利者が権利行使使用としたが、東北地方のある県での流通事情を考え、7店舗の間で有名だから認めたという事例もあります。

このように、個別具体的に判断されるので、早めに商標をとって先使用権の主張に頼らないようにしたほうが経営は安定すると思います。

<今日のまとめ>
1.他人の登録商標の出願日前から不正競争の目的でなく使っていて、出願日前から有名であるなどの各種要件を満たすと先使用権を有することもある。
2.ただし、有名かいなかの基準はゆれるので、安全のために商標出願をしたほうが良い。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年12月1日月曜日

商標出願の打ち合わせの流れ(初めての方へ)

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、商標申請の打ち合わせの流れの話です。

たぶん、多くの起業家にとって、弁理士との商標登録申請の打ち合わせは初めての体験になると思います。

例えば、プロシード国際特許商標事務所での大まかな流れを書きますと、以下のようになります。

【手続きの流れ】

1.WebやMailや電話で連絡をし、日程を決める。

  このときに、ビジネスの概要や、使いたいと思っている商標を聞くことが多いです。
  取得する必要のある権利の範囲(商品やサービス)にあたりをつけたり、登録できない商標ではないかを考慮します。

2.実際に打ち合わせをする。
 
  ここで、書類を作るための情報をいただき、書類の作成に入ります。

  例えば、ビジネスの詳細や将来展望、起業の時期、一番使うロゴや商標のパターンなどを聞きます。
  将来展望によって、お勧めする指定商品(権利を取る商品)や指定役務(権利を取るサービス)が変わったりします。
  また、会社を登記する前に商標の登録申請を行い、商標権を会社に移転する場合には、税金や弁理士への手数料が発生するため、私は、会社登記後すぐの申請をお勧めしています。

3.申請書類を確認し、提出指示をする。

  FAXで提出指示をすることになります。当所がFAX受信後、特許庁に書類の提出を行います。

だいたい、打ち合わせをしてから1週間以内で特許庁に申請書類を提出することになります。

【必要な情報】

 ○ ビジネスプラン
 ○ 商標名案(ロゴ)
 ○ 登記簿のコピーなど
 ○ ロゴなどの図形の場合には、画像データ

これらの情報が書類を作成するために必要になってきます。

なんとなくイメージがわきましたか?

お読み頂きありがとうございました。

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板橋区で無料セミナー(ただし子供向け)開催

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、無料セミナー(ただし子供向け)開催の話です。

実は、12月7日(日)に小学生向けに、「出張!IPカルチャー教室」の講師をやります。

小泉内閣時代に知財立国と叫ばれていましたが、次世代の子供たちに知的財産制度に親しんでもらうことが重要ではないかと思っています。

工作などもありますので、お近くにお住まいのかたは遊びに来てください!

<出張!IPカルチャー教室>

開催場所:板橋区常盤台4-14-1 板橋区立教育科学館
     東武東上線の上板橋駅から平和公園付近に歩いて行くと5分ぐらいでつきます。

開催日:2008年12月7日(日)13:30~15:30

プログラム:13:30 開会
      13:35~(1)サイエンスショー
      14:00~(2)工作体験
      14:30~(3)クイズで学ぼうIPカルチャー!
      15:10~(4)まとめ
      15:30 閉会

お読み頂きありがとうございました。

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2008年11月28日金曜日

欧州共同体意匠制度の枠組



こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、欧州の意匠制度の話です。

本日、弁理士会の研修で欧州の意匠制度のセミナーを聞いてきました。

そのノート代わりのものです。

かなりマニアックな話題ですし、長文ですので、気が長い方以外はお読みにならない方がいいかもしれません。

また、もしも考え違いなどしていましたら、ご教示いただけるとありがたいです。

[欧州共同体意匠(community design)制度の枠組]

1.欧州共同体意匠制度の概論

 意匠規則(CDR:community design regulation)が本法である。

 加盟国は、以下の27国(2008年11月現在)
 オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、ドイツ、ギリシャ、フィンランド、フランス、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、オランダ、イギリス、ブルガリア、ルーマニア

 つまり、この制度を利用すると上記の27国で使える権利を持つことになる。

 非加盟国は、以下の4国
 スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ

 つまり、この制度を利用しても、スイスや、トルコ(旅行したいなぁ)では保護できない

2.欧州共同意匠制度では、UCD(Unregistered Community Design)とRCD(Registered Community Design)との2種類の保護制度がある

○UCD(Unregistered Community Design)
 登録不要の意匠権で著作権みたいなものです。

A.加盟国にデザインを最初に市場投入することによって無方式で権利発生
  (日本で最初に公開するとたぶんダメ)
B.共同体域内で公衆に利用可能になった日から3年
C.相対的権利

 日本の著作権のように、自然発生するようです。

 欧州共同域内で、公衆に初めて利用可能になってから3年間は保護されるようです。
(Cf.日本国内の不正競争防止法第2条第1項第3号)

 ただし、日本で最初に利用可能になった場合、保護されるかどうかはわかりません。
 保護できる、保護できないという議論がありますが、裁判例がないので本当のところはわかりません。

○RCD(Registered Community Design)
 無審査で登録される意匠権です。

A.出願及び登録が必要
B.出願日より5年、更新可能最長25年
C.絶対的権利

 登録によって権利が発生します。
 米国のように、1年間のグレースピリオドがありますので、日本で販売してから1年以内であれば、権利を取ることができます。
 また、当初UCDで、1年以内に商品の売れ行きに応じてRCDに切り替えるという運用もされているようです。

○RCDのメリット

 1.無審査主義(中国と同じで方式があっていれば登録される)
 2.費用が安い(あとで金額を書きます)
 3.27国に対して1つの出願で済むので、手続きが楽
 4.意匠の概念が広いため、後述するように、商標出願の代わりにもなり得る。
 5.一定の条件下で並行輸入を差止可能出来るらしい。
 6.ある国の判決を他の国の判決に使用可能である
 7.物品に依存しないことも可能(ロゴ)
 8.侵害時は、物品を無視 CDR36(6)

○RCDのデメリット
 1.無効にされるとその効果が27カ国に及ぶ
   (つまり、27カ国で一つの権利だから。。。)

○RCDの出願受理状況
 2006年 約6.9万件
 2007年 約7.7万件

○RCDの登録公告状況
 2006年 約7.0万件
 2007年 約7.4万件

○RCDで登録までかかる期間
 2007年では、5週間程度、約3ヶ月で公報発行

○RCD代理件数ランキング
 一位.ドイツ
 二位.イギリス←それで、前回の商標弁理士協会(ITMA)のセミナーで欧州共同体意匠
 三位.イタリア
 四位.フランス


○保護対象(特許庁の仮訳を引用) 
A.意匠の定義:「意匠」とは,製品の全体又は一部の外観であって,その製品自体及び/又はそれに係る装飾の特徴,特に線,輪郭,色彩,形状,織り方及び/又は素材の特徴から生じるものをいう。
 (CDR3a)
B.製品の定義:「製品」とは,工業又は手工芸による物品をいい,その中には,特に複合製品に組み立てることを目的とする部品,包装,外装,図示記号,印刷用活字書体等を含むが,コンピュータ・プログラムは含まない。
 (CDR3b)
C.複合製品の定義:「複合製品」とは,交換することができ,分解及び再組立を可能にする複数の構成部品によって構成されている製品をいう。
 (CDR3c)

○保護される意匠の具体例
A.全体意匠
B.部分意匠
C.装飾
D.ロゴ ← 重要 日本とは異なり、商標的な保護もできるようになる。
E.グラフィックシンボル ← 重要 日本とは異なる
F.アイコン ← 重要 日本とは異なる
G.キャラクタ ← 重要 日本とは異なる
H.彫刻
I.タイプフェイス ← 重要 日本とは異なる

3.出願手続き

○手数料
 一意匠一出願
  EUR 350(登録料230 公告料120)

 多意匠一出願(一度に99意匠まで平気なようです)
  2~10 (登録料115 + 公告料60)
  11~  (登録料 50 + 公告料30)

 公告繰延料(日本の秘密意匠のようなもの)
  1意匠  EUR40
  2~10 EUR20
  11~  EUR10

 更新料
  1回目 EUR 90
  2回目 EUR120
  3回目 EUR150
  4回目 EUR180

日本の秘密意匠のように、登録されても秘密にしたい場合には、まず、登録料+公告繰延で支払い、3年以内に公告料を支払うことで、公告されます。
原則は、3年間秘密にされます。

○図面または写真
 1~7図面(写真)

 日本とは異なり、A-A線などは、ダメ、100words以内のDescriptionで説明するようです。例えば、B図は、A図の下面図である。など

 ロゴ(Logos)で出願することによって、物品拘束がないグラフィックシンボルの出願が可能です。

○願書の必須記載事項(CDR36)
 (a) 登録願書
 (b) 出願人を確認する情報
 (c) 意匠の表示であって,複製に適したもの

(2)出願書類には,その意匠を組み込む予定であるか又は適用する予定である製品の表示を含めなければならない。

 また、以下のものを出願書類に含めても良いようです。
 (a) 表示又は見本を説明する説明書
 (b) 第50条による,登録公告の延期を求める請求書
 (c) 出願人が代理人を選任している場合は,代理人を確認する情報
 (d) 意匠を組み込む予定又は適用する予定の製品に関するクラス別分類
 (e) 意匠創作者若しくは意匠創作者集団に係る名称表示,又は出願人

 出願時、登録時に、Class、Descriptionは関係ないようです。
 例、自動車で出願、おもちゃに権利行使可能なようです。
 また、Description は公開されないとのことです。

○優先権
 出願日から1月以内CDIR8(1)
 出願日から3月以内CDIR(1)
 最初の開示から6月以内(CDR44)

○無効審判
 ルート1(無効を求める) OHIMの無効審判部 第一裁判所 欧州裁判所
 ルート2 (侵害訴訟の反訴) 欧州意匠裁判所

○侵害訴訟
 裁判管轄CDR81条 CDR82条
 上訴(CDR92条)
 有効性の推定(CDR85(1) CDR85(2))

○登録要件(無効審判)について
 A.新規性 CDR5(1)(b) CDR(2)
 B.独自性 CDR6
 C.技術的機能によって定められた意匠、連結の意匠に該当しないこと
 D.第三者の商標など知的財産と抵触しないこと
 E.意匠保護の除外(見えないものは保護しない)

 審査官は上記の条件を審査しないので、無効審判の際に判断される。

 OHIM Invalidity division 3~5名
    ↓
 OHIM Board of appeal
    ↓
 Court of First Instance
    ↓
 European Court of Justice

 登録対無効宣言0.16%
 うち無効が認容60%

 当事者主義の原則 CDR63

 独自性(individual character CDR6)の判定は、以下のように行われるらしい。
 A.Informed userの感覚による(not professional, not ordinary person. They have design awareness.)
 B.全体印象、支配的な特徴で判断する。
 C.独自性の判断はデザイナーの創作の自由度を考慮する。
   -機能性に依存している。
   -似たものが多くある。

○第5条及び第6条の適用上、無効理由になる意匠(CDR7)
1.出願前に公衆の利用に供された意匠
2.EU域内で事業を営む当業者にとって、ビジネスの通常の過程で、合理的に知り得た意匠(例、アメリカや、中国の意匠公報)

 また、無効審判の請求人適格は、無効理由によって異なります。

 将来的には、この内容を整理して、図解したいなぁと思っています。

4.参考リンク

特許庁の外国産業財産権制度情報のページのリンク
(各国の法令の仮訳が掲載されています)

OHIM(Office of Harmonization for the Internal Market)のページより
Community Design Regulations
Registered Community Designの検索ページ

お読み頂き本当にありがとうございました。





そのビジネスプランを発表する前に気をつけること


こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、ビジネスプランを発表する前に気をつけることの話です。

現在、私がアドバイザーを務めているドリームゲートでビジネスプランコンテストの告知が始まりました。

以下、その概要です。

【主催】
 ドリームゲート

【テーマ】
 フリーテーマ(どのようなテーマのビジネスプランでもかまいません。)

【特典】

 1.マッチング
  ファイナリスト(7名)は、100名のオーナー経営者、起業家の前でプレゼンテーションができます。
  著名なメンター経営者、有識者、投資家とマッチングのチャンスがあります。
 2.PR
  ファイナリスト(7名)は、ドリームゲートWEBサイト内専用ページにて
  継続的に広報しPRを支援します。(月間350万PV)
 3.賞金
  ドリームゲート大賞(1名)に選ばれた方には、
  スタートアップ資金として賞金100万円を授与します。
【選考フロー】
 ●応募締め切り : 2009年2月8日(日)

 ●1次選考(書類選考): 2009年2月9日(月)~ 2月13日(金)
 ※1次選考を通過した方は、ドリームゲート本部から直接ご連絡いたします。

 ●2次選考(プレゼンテーション選考):
 【大阪】 2009年2月21日(土)14時~ 会場 : 未定
 【東京】 2009年2月22日(日)14時~ 会場 : ドリームゲート本部
 ※1次選考を通過した約20名(東京・大阪:各10名前後)が、
 ドリームゲート代表・松谷を含む3名の選考委員の前でプレゼンテーションを行います。

 ●最終選考(グランプリファイナル):
 【東京】 2009年3月11日(水)16時~ 会場 : ANAインターコンチネンタルホテル東京(溜池)
 ※2次選考の成績上位7名がファイナリストとして、最終プレゼンテーションを行います。
 7名の審査委員、100名のオーナー経営者の投票によりドリームゲート大賞を決定します。

【募集ページ】
http://www.dreamgate.gr.jp/gp/gp09/


本題!

このようなビジネスプランコンテストで発表した後に、特許権など取れますか?という質問を受けました。

基本的にビジネスプランコンテストで発表すると特許権はとれません。

特許権は、一般に知られていない発明にしか与えられないからです。

このため、技術系の起業を考えている方は、大変だと思いますが、ビジネスプランコンテストの準備と並行して、特許権の取得の準備をされたほうがいいですよ。

知財関係で、お手伝いする必要あれば、私もドリームゲートで無料相談も受け付けているので、お気軽にご相談ください。、

また、守秘義務がない人に知られちゃうとだめなので、ベンチャーキャピタルの人や、起業支援のコンサルタントと話すときも一応、守秘義務を確認してみてください。

ちなみに、弁理士は、弁理士法に守秘義務規定があり、これを破ると罰金や、禁固刑となるので、安心してご相談ください。

もっとも、ほとんどの弁理士は、罰則が仮になくてもプロとして、守秘義務は守ると思いますけどね。

<今日のまとめ>
1.ビジネスプランを発表すると基本的にその内容で特許権が取れなくなる。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年11月27日木曜日

山梨勝沼(中国の商標問題)

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、「山梨勝沼」の話です。

また、中国で、上海の個人によって「山梨勝沼」という日本の地名商標が出願されているという報道がありました。

それで、横内正明山梨県知事が、今年度中に監視体制の強化を進める考えを明らかにしたそうです。

たぶん、この商標が中国で登録された後に、取消を求めることとなると思います。

ただ、この手続きは平均して3年から4年かかってしまうので、登録後から取り消されるまで「山梨勝沼」というブランド名を山梨県が中国で使いにくくなるでしょう(下手をすると商標権侵害となるので。。。)。

一応、中国の商標法では、「一般に知られた外国地名は,商標とすることができない。」(中国商標法第10条 特許庁のwebsiteより転記)という規定があります。

しかし、中国の出願件数は約60万件あり、一人当たりの審査官の処理件数は、かなりのものですし、審査官の全てが日本の地名に詳しいとは限りません。

このため、日本の地名は今後も登録され続ける可能性がきわめて高いと思います。

それでは、どうすればいいでしょうか?

対策方法としては、以下の2つがあると思います。

1.中国での商標出願を常に監視し、登録されたら取消を求める。
2.中国で先に権利を取る。

1は、一見費用がかからないように見えますが、一回登録されてしまうと、時間と費用がかかります。

2は、最初に費用はかかりますが、登録後は安心していられますし、費用もトータルでは安くなります。

私が相談を受けたなら、2をお勧めします。

また、一部の地方自治体では、積極的に中国に商標を出願する予定であるとの話を聞いています。

なお、JETROのwebsiteにも中国における地名商標の登録問題に対する記事があるので、もしも巻き込まれた場合には、参考にされるといいかも知れません。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年11月26日水曜日

発明した人、出した人、どっちが権利をとれるの(先発明主義と先願主義)

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、発明した人、出した人、どっちが権利をとれるの(先発明主義と先願主義)という話です。

よくグローバルスタンダードに基づいて、○○しましょう。という話があります。

実際は、アメリカの方法を導入するだけ。ということも多いようです。

さて、特許など知財の世界において、アメリカの方法は他国と異なり独自の展開があるので注意が必要です。

例えば、アメリカでは、先発明主義が採用されています。

先発明主義?なんだろうと思われるかもしれません。

これは、先に発明した人が特許権を取得できるというものです。

これに対して、日本をはじめとしてほとんどの国では先願主義を採用しています。

こちらは、先に特許庁に手続きをした人が特許権を取得できるというものです。

具体例をあげると、

Bさんが、2月14日に電話を発明し、特許庁に3月7日に手続きしたとします。

Iさんが、2月20日に電話を発明し、特許庁に3月3日に手続きしたとします。

アメリカでは、先に発明したBさんが、特許権を取得できます。
(他の要件を満たしていると仮定します。)

一方、日本では、先に手続きしたIさんが、特許権を取得できます。

一見、先に発明したBさんが権利を取得できるアメリカの制度の方が良い方に思えるかもしれません。

しかし、アメリカのように先発明主義の国では、似たような発明があった場合、どちらが先に発明したかどうか証明しなければなりません。

発明の完成って、どうやって証明すればいいと思いますか?

お風呂で思いついた瞬間でしょうか?理論を解明した時でしょうか?実験に成功した時でしょうか?

これは、特定するのが難しく、結構大変な作業です。

この証明のためか、アメリカの研究ノートは厳格につけられているそうです。

これに対して、日本など多くの国では先に手続きをした方が特許権を取得できますし、特許庁に手続きの記録がありますので、どちらが先に手続きしたのか簡単にわかります。

このため、アメリカの大企業や、多くの国の人たちがアメリカに先願主義になって欲しいと願っています。

それで、アメリカでも先願主義に変更しようとする動きがあって、この間も議会に法案が提出されてたのですが、つぶれてしまいました。

私は日本が採用している先願主義のほうが好きですので、知財でもグローバルスタンダードに基づいて、○○しましょうというなら、アメリカの先発明主義が変わってくれればいいなぁと思っています。

<今日のまとめ>
1.日本は先に特許庁に提出したほうが権利を取得できる先願主義を採用している。
2.アメリカは先に発明したほうが権利を取得できる先発明主義を採用している。

お読み頂きありがとうございました。

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2008年11月25日火曜日

オープンイノベーション

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、オープンイノベーションの話です。

ヘンリー・チェスブロー教授が唱えているオープンイノベーションという概念はご存知でしょうか?

弁理士会の価値評価推進センター運営委員会の特別部では、よく話題となっている概念です。

正確さを失うかもしれませんが、簡単にいえば、この概念は、「自社だけでなく他社の知財も利用しちゃえ!」というものです。

有名な例として、P&Gのプリングルズの事例などが挙げられます(P&G:コネクトアンド・ディベロップ戦略 ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2006年8月号 参照)。

プリングルズの表面に絵を描くために、自社だけでなく、世界各地の技術を探し、イタリアの技術を導入し、半年で商品を導入できたという事例です。

また、オープンイノベーションの支援会社としては、ナインシグマ社やオーシャントモ社などが知られています。

これらの会社は、知的財産権の仲介を行っています。

両社とも、一歩間違えるとパテントロールを作り出さないかなぁという怖さもありますが、埋もれている知的財産権を掘り起こし、社会に役立てるという観点からは素晴らしい事業をしていると思います。

さて、このオープンイノベーションという概念を作り出したヘンリー・チェスブロー教授さんの新刊がこのたび翻訳されました。

オープンイノベーション 組織を越えたネットワークが成長を加速する

明日(11月25日)に発売です。

お読み頂きありがとうございました。

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