2008年12月19日金曜日

知財屋のための価値評価入門 その4 NPVなどの注意点

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、知財屋のための価値評価入門 その4 NPVなどの注意点の話です。

さて、昨日までNPVやWACCなどを説明してきました。

例えば、ライセンスの値付けの時に、相手がNPVに基づいて10億円という金額を提示したとします。

でも、こちらの想定していた金額は5億円で、その金額と比較すると高い金額です。
予算オーバーですし、このままの金額を飲めば、上司に怒られます。

どうすれば、いいでしょうか?

「高い!」と言って、交渉を断ち切るようなはったりをかましますか?
それとも、NPVで計算されているからあきらめて受け入れますか?

いえいえ、別の方法があります。
相手のNPVの前提条件を精査し、交渉する窓口を見つけるのです。

NPVは、利率(資本コスト・WACC)、期間、フリーキャッシュフローに分解できます。

例えば、資本コストが低いと、NPVが高くなります。そこで、自社の資本コストが高いということを主張してもいいでしょう。

また、期間が長めに設定されると、NPVが高くなりがちですが、商品寿命や、その技術の賞味期限が短いことを主張してもいいでしょう。

さらに、フリーキャッシュフローの計算で、売上が楽天的であれば、控え目な数値を主張してもいいでしょう。また、コスト感覚が甘ければ、実際にかかるコストを主張するのもいいでしょう。

さらに、ディシジョンツリーなどで、そのライセンスを使った事業が成功する場合のシナリオや、失敗した時のシナリオを描くことによって、NPV全体を低下させることができます。

一つの変数だけをいじると恣意的に見えてしまうので、いろんな場所を少しづつ変更し、全体として、NPVを下げたほうがいいかと思います。
一見、合理的に見えるので。。。

このように、相手がNPVなどの数式を使って交渉してきてもあわてずに、本当にその数字を導き出した前提が正しいか確認するといいと思います。

また、投資銀行や、ベンチャーキャピタルの知人たちは、NPVなどは数字を説明するために使うとよく言います。

つまり、最初にターゲットの金額があって、自分の上司や、株主、相手、相手の上司に対して、数字が出た根拠を説明するために使うそうです。

NPVなどは、価値を評価するためのすばらしい理論ですが、インプットが間違っていれば、間違ったアウトプットとなります。

そこを意識してライセンス交渉などで有効活用してください。

知財屋のための価値評価入門は、今回でひとまずお休みです。
Mさんご質問ありがとうございました。

お読み頂きありがとうございました。

<今日のまとめ>
1.相手が出してきたNPVは、計算の前提を注意深く精査する必要がある。

テクノラティお気に入りに追加する

0 件のコメント: