2008年12月19日金曜日

知財屋のための価値評価入門 その3 WACC

こんにちは、

プロシード国際特許商標事務所
弁理士の鈴木康介です。

今日は、知財屋のための価値評価入門 その3 WACCの話です。

WACCってなんでしょう?
一昨日、昨日で出てきたDCFやNPVを計算するときの割引率です。

WACCは、会社やプロジェクトが集めてきたお金が求める最低限のリターンです。

会社がお金を得るには三つの方法があります。

一つ目が利益です。

 昨日の例でいえば、焼き芋を売って得た、利益が該当します。
 顧客の期待に応じた結果とも言えます。

二つ目が借金(負債)です。

 これは、銀行からの借り入れや、社債などが該当します。
 銀行などは、所定の利子を払うことを期待しています。

 負債による資金調達は、利子を払うため、負債コストがかかります。

 負債コスト(rD) = 金利
          = 支払利息 / (期首有利子負債 - 期末有利子負債)

三つ目が株の発行です。

 これは、資本家から資金調達します。
 一見返す必要のないお金に見えますが、実は、資本家は、株の値上がりや、配当を期待しています(と仮定します)。

 株主は、会社が破たんすると投入した資本を回収することができません。

 このため、ほとんどリスクのない国債よりも高い利回りを期待します。
 もしも、同じ利回りだったら、株に投資しますか?銀行に預けますか?

 そんな感覚です。

 株で資金調達するときの株主コストは一般的にCAPM(Capital Asset Pricing Model 資本資産価格モデル)で計算されます。

  株主資本コストrE
  =リスクフリーレート + β×リスクプレミアム
  =リスクフリーレート + β×(市場全体の投資利回り - リスクフリーレート)

  リスクフリーレートは、例えば、国債や、米国国債などリスクがほとんど無いと考えられるものの利率です。

  リスクプレミアムは、例えば、インデックスなど市場全体の投資利回りからリスクフリーレートを引いたものです。

  βは、市場の状況に応じて、その会社の株価がどのように動くかという係数です。会社ごとに決まっています。
  
上記の三つの方法によって会社は資金を集めます。

こうして集めた資金は、借金によるものや、株主資本によるものの比率によって、最低限求められるリターンが定めれらます。

これが、WACC(Weighted Average Cost of Capital 加重平均資本コスト)です。

 WACC=D/(D+E)×rD×(1-税率)+E/(D+E)×rE
 
 Dは、借金の総額 
 Eは、株主資本
 rDは、負債コスト 
 rEは、株主資本コスト(CAPMで計算したもの)

このようにして、計算されたWACCがDCF法の割引率として使われます。
 
明日は、知財価値評価の際の注意事項で、数式はほとんど出てこないはずです。

お読み頂きありがとうございました。

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